どうして自分は(脳は)注意散漫なのか?

普段使っている脳について考えてみたくなり以下の本を買いました。

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思考やストレスについて日々疑問に思っていた事が古今東西の脳神経の研究結果を元に語られており興味深い一冊です。

 

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はじめに

簡単なエクササイズをしてみませんか?外からの情報、椅子に座っている感覚とか服の着心地とか部屋の温度とか、を10秒間とにかく集中し続けてみましょう。いいですか。いきますよ。スタート。

 

注意を向けていた情報に途切れる事無く集中できたでしょうか。できた人は素晴らしい!僕はついつい感覚から連想ゲームが始まったり、別の情報に気を取られたりしてしましました。

どうして自分は(脳は)注意散漫なのか?

もちろん時間を忘れてゲームに熱中したり、コーディングしていたりする事はありますが、その集中を自分でコントロールできているかというとそんな事はありません。むしろ「集中したい」と思った時に限って余計に上手く行かないです。

デフォルトネットワークとは何か

個人的に注意を妨げるものの代表格が「連想ゲーム」です。感覚から想起されたイメージが自由に翼を広げて脳内を飛び回ります。これは「デフォルトネットワーク」というものが影響している様です。

デフォルトネットワークという動作は起きている間はほぼ常に作動しており、またその特性上労力がさほど掛かりません。この動作は海馬をはじめとする記憶領域と連動した内側前頭前皮質(意識的な活動を行う脳の部分)によって起こります。

本の中でこのデフォルトネットワークは「物語回路」と呼ばれている事が紹介されており、この回路を経由して経験するとその経験を自分の中で「意味のある形」にフィルタリングされ自分の解釈を加えます。

物語回路が作動した状態で桟橋に座っていると、涼風は涼風ではなく、夏の終わりを告げるサインとなり、たちまちどこにスキーに行こうか、スキーウェアをクリーニングに出す必要があるだろうかとあなたは考え始める。

デイビッド・ロック. 最高の脳で働く方法 Your Brain at Work (Japanese Edition) (pp. 153-154). Kindle Edition. 

もしこの物語回路がなければ現実はとても味気のないものになる気もします。

もう一つの経験方法、直接経験

物語回路を使わずに経験する全く別のやり方で「直接経験」と呼ばれるものがあります。リアルタイムで五感に受ける情報を感じている状態です。最初にした「何か外からの情報に集中する」というのはまさに直接経験を目指して行ったエクササイズでした。

直接経験の特徴は、エラーの検知と中の切り替えを司る部分の活性化が行われるのと、過去や未来のこと他人や自分のことを頻繁に考えたり検討する事がなくなることです。

また、直接経験は考え方や解釈にとらわれず周囲の多くの情報に気がつけるようになるメリットがあります。当たり前ですが、情報が増えれば選択肢が広がりより適切な選択が可能になります。

2つの経験の関係

これらの2つの経験は逆相関関係にあると本では述べられています。これは実際に経験したことが僕はあります。たとえば考え事をしながら机からコーヒーカップを手に取り、その時に見つけたゴミももう片手に取った後ゴミ箱にコーヒーカップを捨てそうになったり。考え事が頭から離れずせっかくの美味しいご飯をよく味わえなかったり。逆に身体で受けている感覚に集中している時は物語回路の活動が低下します。

どちらかの感覚に意図的に寄せたい状況でもない限り、これらがある程度のバランスを保っている方が良いと思います。思い返すとプロジェクトでトラブルが発生した時、様々な情報が頭の中を駆け巡り目の前の情報を見落とす事があります。そうした時は深呼吸一つを入れるだけでも多少直接経験が刺激され、相対的に物語回路の興奮を和らげると言います。

仕事に置いて言うと僕はよく物語回路の暴走モードに突入するので、コードレビューでロジックなどに集中して改善点に気がつく事がありますが、大胆なtypoなどを見逃しがちです。そういったのを防ぐためにUIを変えてコードを見直していましたが、これは暗に直接経験を促すための行動だったのかなと思い合点がいきました。

物語回路 vs 直接経験

10秒集中するエクササイズを行ったとき、注意が削がれ連想ゲームを始めてしまう話をしました。あれは直接経験から物語回路のネットワークに脳が切り替わった瞬間です。「物語回路はどっかいけ!」と思った時、再び直接経験の回路が再起動しました。今までも同様の経験をして「自分は集中力の無い人間なのか」と少し諦めていましたが、どうもそうとは言い切れなさそうです。人類の進化の中で覚醒時は常に動いているデフォルトネットワークなのでそうなるのが当たり前なんですね。

自分の事はわかっているようでわからないもので、「そういうものなのか〜」と分かっただけでも病名が付いた様な安心感がありました。

このエクササイズを繰り返すと回路が切り替わった瞬間に頻繁に気がつける様になると言います。回路の切り替え自体は「今は物語回路はどっかいけ!」と念じれば切り替わるので、気がつければ回路のコントロールはなんとかなりそうな気もします。

瞑想習慣のある人など、物語と直接経験の回路を意識する練習を常にしている人たちは、2つの回路をより明確に区別していた。こうした人たちは常に今どちらの回路を使っているかを把握し、回路を容易に切り替えることができた。一方、これらの回路を意識する練習をしたことがない人たちは、無意識のうちに物語回路をとる傾向にあった。

デイビッド・ロック. 最高の脳で働く方法 Your Brain at Work (Japanese Edition) (pp. 157-158). Kindle Edition. 

前述した通り、僕が物語回路に集中しきってしまうのは傾向としてあるようです。この回路の切り分けが上手な人たちがいます。それはマインドフルネス瞑想をしている人たちで、瞑想時にはこの回路のが切り替えが度々行われ、それを繰り返すにつれてどの回路に今自分がいるかを知覚でき切り分けができる様になると言います。

「マインドフルネスは習慣であり、実践すればするほど、楽にその状態に入れるようになる……つまり、身につけることができるスキルである。自分にすでに備わっているものを引き出せばいいだけだからだ。マインドフルネスは難しくない。マインドフルな状態でいるのを忘れないようにするのが難しいだけだ」

デイビッド・ロック. 最高の脳で働く方法 Your Brain at Work (Japanese Edition) (p. 159). Kindle Edition.