Kindleでも買えるし、安いし、短いし、おもしろい。
雑多な感想
文章や内容からして、キッズ達に向けて書かれた本みたいだけど大人でも面白く読める。 「大気中の酸素と窒素の含有量はどんなもんか」とかは割とどうでもいい。それよりも、研究者達の健気さが魅力的だと思う。何百年前の人がどうやって研究を行っていていたか。今みたいにコンピュータもない時代に、研究に研究を重ね、時には命をかけて研究する科学者たちの本でした。
当たり前ですがコンピュータとかがないので、研究方法も超アナログ。Amazonでモノを揃えれば明日にでも同じ実験ができそうな方法で、どんどんと大気の謎が解き明かされていく様は痛快です。説明もわかりやすいし。
登場した科学者の中でもゲーリュサックはとても気概のある男だと思った。気球に乗って上空7000メートルへ上昇し(なおWikipediaには6800メートルとあった)、零下9.5度の環境で空気を採取するなんて頭がおかしい。ちなみに飛行機は7300mから9100mの高度で移動しているらしい。ゲーリュサックはほとんど僕が飛行機から見る眺めと同じものを気球から見ていたなんてどうかしてる。どこまで風に飛ばされて不時着したのか考えるのも恐ろしい。
印象に残った一節
それにしても、ロード・レーリーや、ラムゼーが、窒素の比重のわずかな差に目をつけ、それから、新元素の発見という大きい仕事をなしとげたことは、私たちにたいせつなことを教えずにはおきません。私たちは、とかく、すこしくらいのちがいがあっても、それを見すごしてしまったり、または、これだけは、例外だなどとかんたんに片付けてしまうのがつねです。けれども、自然は、このような小さい、人々の気のつかないところに、そのたいせつな秘密をかくしていることは、アルゴンの発見においてよく知ることができます。 -- 三宅泰雄『空気の発見』(1962)角川ソフィア文庫, p103
自然に限らず、何かに打ち込む人には大切な一節だと思う。研究者(または勝手な解釈で開発者)としての心構えも十分に学べる一冊。著者も大気について、というより「研究者とはどんなものか」について子どもたちに伝えるため書いているようだった。 おすすめの一冊。